2019.03.13
季節の食卓
ふるさとレシピ 第6回『鯛めし』

ふるさとの味を求めて全国の食卓にお邪魔する「ふるさとレシピ」。今回は愛媛県宇和島市・山内さんの鯛めしをいただきました。
「この辺じゃ鯛もみかんも、もらうもの!」
愛媛県宇和島市遊子(ゆす)漁協女性部の山内満子(やまうちみつこ)さんが鱗引きを動かすと、大人の親指の爪ほどもある立派な鱗が、勢いよく剥がれ、飛び散る。
「今日は遊子自慢の養殖魚をたっぷり召し上がってもらいますよ!」。そう威勢よく話しながら4キロ近くもある巨大な鯛をあっという間におろしていく。
鯛めしは、船の上で食べる漁師料理が始まりとも言われ、昔から鯛の漁獲が盛んであった宇和島には、鯛めしの他、様々な鯛料理が伝わる。
また、養殖が盛んになって以来、鯛はさらに身近になった。
実際に得意料理は?と漁協のお母さん達に尋ねると、次々に、アラ炊きから、味噌汁、塩焼き、フライ、天ぷら。
途中で「あれは隠し味に醤油を足すとよい」など口をはさみ合いながらあがる調理法も様々。聞けば、この高級魚を、毎日のように食べるのだそうだ。
しかも「この辺じゃ鯛とみかんは買わないからね」、「そうそう、鯛もみかんも、もらうもの!」と。全く驚きである。

「鯛めし」1つ取っても、炊き込み鯛めし、漁師風鯛めし、鯛めしの焼きおにぎりと、様々な料理がずらり。
形を変え育まれた新しいふるさとの味
「これが我が子の様に大事に育てた鯛ですよ」と山内さんが新鮮な切り身を差し出します。
口に含むと、いやあ参りました。身には弾力があり、鯛独特のねばり、そして甘みの主張の強いこと!
「身を一緒に炊き込む方法もあるんだけど、こんなに美味しい鯛が〝だしがら〟になっちゃ、勿体ないでしょ?」と、山内さん。
遊子漁協女性部の鯛めしは、タレに漬けこんだ鯛の切り身を香ばしく焼き、鯛の骨で引いた出汁の炊きこみ飯に、最後に混ぜ合わせる。
主役の鯛の味をもっともおいしく食べる調理法でもあるのだ。
「これもこれも」と自慢の鯛料理を次々に勧められる。
漁師料理の鯛めし、塩釜焼きと、身の味がまっすぐなせいか、味付けにより、驚くほど表情が違う。
「皆で話しながら、いろんな味を試しているんです」と語る山内さんの鯛めしは、日常的に手に入るようになったからこそ形を変え育まれた、新しいふるさとの味なのかもしれない。

遊子漁協女性部が「遊子の台所」として、地元養殖魚の美味しさを広めるため考案した特製「鯛めし」のレシピをご紹介。
作ろう♪鯛めし
桜色の美しい身、武者兜のように雄々しい背びれ、姿の勇ましさ、味の良さ……
「魚の王」とも呼ばれる鯛は、古くから祝いの食卓には欠かせない魚でした。
そして現代。愛媛県宇和島市では養殖業が盛んになり、鯛が身近な魚に。
そんな鯛の旨みを知り尽くしている山内さんに、美味しい「鯛めし」のレシピを伺いました。
ハレの日でも、ケの日でも、食卓を春めかせ華やかにしてくれる鯛料理。
今回は「鯛めし」のレシピを、取材時の分量をそのままに、10人前たっぷりでご紹介します。
[材料(10人前)]
〈だし汁〉 水…1升
鯛の中骨…250g
〈具材〉 鯛の切り身…200g
みりん…25cc
薄口醤油…50cc
酒…200cc
〈飯〉 米…5合
だし汁…900cc
醤油…90cc
酒…90cc
藻塩…少々
[作り方]
① 鯛の中骨を、素焼きにし、弱火でだしを引く。
② 調味料に鯛の切り身を15分漬ける。
③ ②を天板に並べ、オーブンでこんがり焼く。
④ だし汁に調味料を合わせ、米と一緒に炊飯し、③を炊けた飯に混ぜ合わせれば完
成。
<2014年 春号Vol.24 33-34ページ掲載>