2018.11.07

季節の食卓

ふるさとレシピ 第4回『静岡おでん』

「ふるさとの味」を求めて全国の食卓にお邪魔する「ふるさとレシピ」。今回は静岡県・萩原さんちの静岡(しぞーか)おでんをいただきました。

30年以上の思い出が詰まったおでん鍋

玄関の外まで漂ってくる甘い醤油とだしのにおい!おでんの香りってなんて幸せなんでしょう。

お腹を空かせた私を迎えてくれた萩原麗子さん家の食卓では、立派なおでん鍋がふつふつと音を立てていました。


「家族の好みに合わせて具材は調整します。うちじゃ、すぐ牛筋と玉子がなくなっちゃう。ちょっと足しておきましょうかね」と、麗子さん。

手早く洗った牛筋を、調味料を加えただし汁で煮出していきます。こうして牛筋でだしを引いたつゆを味の基本に継ぎ足しながら、具材に味をしみさせていくのが静岡おでん。

大きなお鍋でたくさん作るのが美味しいようで、麗子さんのおでん専用の鍋はもう30年以上活躍しているそうです。


「この鍋を買ったのは3人目の子どもが生まれたとき、市内の金物屋で見つけて一目ぼれして」。ご主人の道夫さんは「相談もしないで買っちゃうんだもの、驚いたよ」と、優しい笑顔。
この鍋は二人のお気に入りなんですね。




練り物に串を通すのは子どもたちの仕事。今日は麗子さんのお孫さんの璃子(りこ)ちゃん、那織(なお)ちゃんが手伝ってくれました。

静岡おでんは憧れの形

青森県出身の麗子さんは、道夫さんのふるさと静岡県に移り住んだときは食文化の違いに驚いたと言います。

おでんの鍋は、静岡人になる決意で買われたそう。

「この鍋は思い切った買い物だったと思います。でも、静岡おでんは憧れの形。食卓の真ん中に置くことで本当の静岡人になるぞって、二度目の嫁入りの気持ちだったんです」。

楽しい思い出がたくさん詰まっているおでん鍋から、おすすめの具材をとりわけてくれます。

萩原家でも人気の牛筋を噛みしめると、じわっと拡がるだしの香り!

柔らかく、口の中でほろりと崩れます。種類豊富な練り物のうまみがしみたつゆを飲み干して、あ〜体が芯から温まる〜!


「青森から会いに来てくれた家族におでんを振る舞ったこともありますし、主人が好きな青森の郷土料理も増えました」。

ふるさとの味が煮詰まるあったかい麗子さんのおでん鍋。これからの季節、きっと何度となく活躍することでしょう。




静岡おでんの材料はいたって身近で、自宅でも簡単に再現可能。秋風で冷えた体を、静岡のうま味が芯から温めてくれます。

作ろう♪静岡の魅力が煮詰まる『静岡おでん』

ほんのり甘辛い、濃い口醤油のつゆには牛筋のうまみがたっぷり!
おいしい牛筋はすぐになくなっちゃうので、だし汁と一緒に継ぎ足しながら楽しみましょう。


静岡県・萩原さんちの『静岡おでん』レシピ

[材料]6人分
水またはだし汁  2リットル
濃い口醤油    200cc
砂糖       大さじ2
酒        大さじ4
みりん      大さじ2
塩        少々

牛筋       400g
大根       1/2本
こんにゃく    1枚
ゆで玉子     6個
昆布       3枚
青のり・いわし粉 適量

◎その他好みに合わせ、練り物やお好みの具材を
黒はんぺん・さつまあげ・ちくわ・ちくわぶ・じゃがいもなど


[作り方]
① 圧力鍋に水またはだし汁と調味料をそれぞれ半量注ぎ、水洗いした牛筋を加えて火にかける。圧がかかってからさらに10分ほど火にかけると柔らかく仕上がる。(圧力鍋が無い場合は30分ほど煮る。)

② こんにゃくは水から茹でてあくを抜き、三角形に切る。大根は輪切りにし、米のとぎ汁で下茹でする。

③ ①をだし汁ごとおでん鍋に加え、②と、昆布、茹で玉子、残りのだし汁を加えて弱火で煮詰め、残りの調味料で味を調える。(一旦冷まし、一晩おくと味がよくしみる。)

④ 練り物に竹ぐしを通し、③に加え、中火で10~20分ほど煮詰めて完成。お好みでだし粉と青のりをかけていただく。
 家族に人気の具材がなくなったら、①を繰り返し、つゆを継ぎ足していく。

★萩原さんのポイント
味付けは好みで調整していいんです。
でも家族の好きな具材は多めに入れるといいですよ。


<2018年 秋・冬号 Vol.42 51-54ページ掲載>

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