2026.03.19

ふるさとレシピ 『たけのこ入り とうふ汁』

その土地の旬の恵みをいただく「ふるさとレシピ」。
たけかんむりに旬とかく「筍」は、まさに春先だけのごちそうです。たけのこの生産・出荷量日本一の福岡県の北九州市で、たけのこ園を営まれる三村訓章みむらのりあきさんに、旬のたけのこ料理を教えていただきました。

おじいさんの代から、受け継がれる竹林

「じいさんはたけのこ掘りが上手くてね。一見何もない地面を指さして『あそこにあるぞ』って、教えてくれるんだ。この辺の子どもたちはそうやって見つけるのが上手くなっていく。
「ホラ、あそこにあるのが、わかるかな?」と、その指先に目を凝らすのですが、残念ながら私には全くわかりません。「ほら、ここだよ」と、訓章さんが茶目っ気たっぷりに笑い、かすかに盛り上がる土を払うと、黄色い先端が顔を出していました。

 合馬のたけのこは気の早いものだと12月に顔を出すこともあるのだとか。まだ寒い冬の内でも、地中には春の命が芽吹いている。そして芽吹きから立派な青竹になるまではあっという間だといいます。
「昔話じゃ、竹取が上着をたけのこに掛けておいたら、夕には手が届かないほど伸びていた……なんて話もあってね。一番伸びる時期は一日で1メートル以上伸びるんじゃないかな」
 2ヵ月で20メートル近くまで成長する竹。まさに目を見張る驚きのスピードです。たけのこは、短い間にしか食べられない、旬のごちそうというわけなのですね。

可愛らしいたけのこを掘り出して、訓章さんの家に向かうと玄関から良い香りが。「あら、たけのこが、見つかったの! 良かったじゃない」と、大喜びで迎えてくださったのは奥さまの理恵子りえこさん。たくさんのごちそうを作り、私を待っていてくれたのです。




「いやいや、私だって落ち込むこともあるんですよ」と明るい理恵子さん。三村家の食卓は、笑いが絶えないのでした。

たけのこは、今も昔も春の楽しみ

「旬のたけのこは色々な料理に使います。にごみ(筑前煮)でしょ、炊き込みにパスタも。それから合馬の郷土料理でもある、とうふ汁ね」
 合馬に嫁いできた理恵子さんが、三村家のお母さまに習ったという「とうふ汁」。早速一口いただくと、鶏のだしがきいたお醤油味のおつゆに、ねぎの甘みが合わさり良い風味! 飴色に染まったたけのこはアクが無くて甘みがあり、ぽくぽくと歯ごたえ抜群、春の味です。

「村の集まりでは必ず振る舞われるから、具材の切り方、お砂糖や醤油の種類、量で各家庭の好みが出るんです。あるとき、市外に住んでいる長女が『ママのとうふ汁が食べたい』って帰ってきて。合馬で知ったこの味は、いつの間にか我が子のふるさとの味になっていたんですね」
 ちょうどお昼どき、食卓を囲む次女の真貴子まきこさんにお母さんはどんな人? と聞くと「いつも笑っているから太陽みたい」とのこと。

 ご夫婦で営まれるたけのこ園では、春には2時に起床するほど繁忙を極めるとのことですが、いつも笑いは絶えないと訓章さんは話します。「かあちゃんは純粋で、笑い上戸なもんだから、俺が冗談を言えばすぐ大笑い。毎日話していて面白いんだ。今日は何言って笑わせようかなって、それが楽しみで早起きするんだよ」。

気の早い合馬のたけのこは春のようなお母さんの笑顔に誘われて顔を出すのかも。恵みに感謝して、あたたかな食卓を後にしたのでした。




合馬の味にたけのこを加えた三村家の定番。

作ろう♪ 「たけのこ入り」とうふ汁



[材料]4人前
水……2リットル
鶏もも肉……500g
ねぎ……1本
ゆでたけのこ……1本
とうふ……2丁

[調味料(入れる順番)]
砂糖……30~40g
薄口しょうゆ……50ml
白だし……50ml
濃口しょうゆ……15~30ml

[作り方]
①鶏肉を柔らかくなるまで煮て、アクをよく取り除き、調味料を砂糖から順に入れて一煮立ちさせる。

②一口大に切ったねぎの根を先に入れ、やわらかくなったらねぎの青み、たけのこ、とうふを加えて火を通す。


<2021年 春号 Vol.52 41-44ページ掲載>




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