2020.02.20

季節の食卓

ふるさとレシピ 第10回『菜の花のからし和え』

日本の北から南まで、様々な郷土の魅力を紹介する『ふるさとレシピ』。今回は千葉県・永井さんちの「菜の花のからし和え」をいただきました。

笑顔咲く菜の花料理

揺れる黄色い菜の花畑の景色を抜け、農家・永井正一(ながいしょういち)さんの畑に向かうと、今度は打って変わって青い菜の花が連なります。

正一さんは近所でも名の通ったひょうきん者なのだそう。あっという間に菜の花を刈って束にすると、「ほら、お花屋さん」とプレゼントしてくれました。


「いらっしゃい!」。菜の花を両手に抱えた私を迎えてくださったのは、永井玉江(ながいたまえ)さん。料理上手と近所で有名です。

「茎を30秒茹でてから、葉まで寝かせると、全体が均等にやわらかくなるの」。

コツを教えてくれながら、手際よく菜の花を湯から上げ、冷水にさらします。葉の緑色が光って新鮮になったかのよう。


「ごめんくださーい」と玄関から聞こえる若々しい声の主は、玉江さんのお友達。台所が一層明るくなります。

菜の花にたっぷりのからしを和えるお友達からは、思わず「目にしみる~」。親し気な笑い声が飛び交います。

玉江さんが、砂糖、出汁パックの中身を加え、醤油を2回し。あっという間に「からし和え」の完成。

「いい加減が“良い加減”! 料理は面白がらなきゃ」と幸せそうに語ります。




からし和えをはじめ、菜の花料理がずらり。菜の花を育てているというお友達も一口食べて、「菜の花にかける愛情が違うわね」とご満悦。

それぞれの食材が丸く一つの味になる

いよいよ、お庭に料理を広げての食事会です。「からし和え」をはじめ、お味噌汁におにぎりなど、色とりどりの菜の花料理。食べると皆さん口を揃えて「美味しい」と笑顔に。

驚いたのは「からし和え」。からしと菜の花の風味に勝ち負けがあるわけではなく、一緒に食べることで一つの料理として風味も奥行きも、グッと増しているのです。


正一さん、玉江さんがいると、会話に花が咲きます。「そろそろ、金婚式じゃない」と声があがると、すかさず正一さんが「金も銀もないよ、あるのはシルバーだけ!」。「いい加減なこと言って」とツッコむ玉江さんとの掛け合いに、皆さん笑顔が絶えません。

玉江さんの料理を楽しむ心に、正一さんの会話を楽しむ心。何事も〝面白がる〟というところが、ご夫婦そっくり。

玉江さんは「似てないわよ!」と照れながら笑いますが、正一さんと笑うタイミングも一緒。

からし、菜の花、それぞれ別の食材ながらも、丸く一つの味になる「菜の花のからし和え」。息の合った永井さんご夫婦だからこそ出せる味なのかもしれません。




どの料理も菜の花のほろ苦い春の味覚が口いっぱいに広がる絶品!

作ろう♪菜の花料理

からし和えをはじめ、様々な菜の花料理を作ってくださった玉江さん。今回は、料理上手な玉江さん秘伝のレシピを伺いました。

■からし和え・ごま和え
[材料(4人分)]
菜の花(葉茎)……200g
醤油……小さじ2杯
砂糖……大さじ1杯
和風だしパック……1パック
A 練りがらし(からし和え)……大さじ2杯
B 黒ごま(ごま和え)……大さじ2杯

[作り方]
①菜の花は塩ゆでし、冷水にさらす。水気をよく絞って、一口大に切る。
②①に醤油、砂糖、和風だしパックの中身を加えて和える。
③さらにA、またはBをまんべんなく和えて完成。


■菜の花のちらしずし
[材料(4人分)]
ご飯……3合
菜の花(花蕾)……100g
人参……1/2本
薄焼き卵……卵3個分
かんぴょうの煮物……40gをあらかじめ煮ておく
★酢……100ml
★砂糖……大さじ5杯
★塩……大さじ1/2

[作り方]
①菜の花の花蕾は塩ゆでし一口大に、人参は茹でて拍子木(ひょうしぎ)切りにする。
②薄焼き卵は0.5cm幅の細切り(錦糸卵)に、かんぴょうの煮物は一口大に切る。
③★を混ぜすし酢を作り、炊き上がったご飯に切るように混ぜ込む。
④③がよく混ざったら、かんぴょう、人参も加え、さらに混ぜる。
⑤菜の花と錦糸卵を上からちらして完成。

★永井さんのポイント
しなしなになった菜の花は60℃くらいのお湯に20分浸けておくと、シャンとした葉茎に戻りますよ!


<2019年 春号 Vol.44 39~42ページ掲載>




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