2026.06.10
日本人の腸はわがまま!?
梅雨はお通じに悩む方が増える季節と言われています。そんなお通じには乳酸菌、そして“乳酸菌といえばヨーグルト”と思われる方も多いのではないでしょうか? しかし、ヨーグルトはもともと海外から入ってきた文化で、歴史的にみると私たち日本人には馴染みが浅いといえます。では、私たち日本人の先祖が摂り入れてきた乳酸菌は一体どのようなものなのか、探っていきましょう。
乳酸菌はヨーグルトだけじゃない
食文化が発達した現代では、乳酸菌と一口にいってもヨーグルトの他に乳酸菌飲料やチーズなどが挙げられます。一方、私たち日本人に馴染み深いのが、漬け物などに含まれる乳酸菌です。
農林水産省のまとめによると、日本の漬け物の歴史は古く、縄文時代にはすでに野菜の皮を塩漬けにしていたとされ、日本人が古くから漬け物の乳酸菌を摂っていたことが伺えます。
そこで、日本人の食文化を振り返り、私たち日本人に合う乳酸菌は何なのかを探ります。今回は、乳酸菌研究の第一人者である農学博士の岡田先生にお話を伺いました。
漬け物や味噌、醤油に入っているのが、植物性乳酸菌

私が乳酸菌の研究を始めて50年以上になります。乳酸菌といっても研究していたのは、漬け物や味噌、醤油、お酒の乳酸菌。それで、私が乳酸菌の研究をしているというと、たいがいの人からは「ああ、ヨーグルトね」と言われました。「漬け物にもいるの?」と、そういう反応が多かったのです。
そこで私は、このような植物由来の乳酸菌と、ヨーグルトなどの動物由来の乳酸菌を区分けして、「植物性乳酸菌」 「動物性乳酸菌」と名づけて論文に発表したのです
日本人は植物性乳酸菌を摂り続けてきた

4000年以上前に建てられたエジプトのピラミッドにヨーグルトを作っている絵が描かれています。そして、15世紀のヨーロッパやアメリカなどではミルクを発酵させて食べるという食文化が既に存在していました。
その一方で、農耕民族である日本人は繊維質の多い米や畑作物などから摂れる植物性食品をずっと食べていました。漬け物もその一つ。日本人は寒い冬に食べる食料として、農作物を漬け物にし保存して食べていたのです。
こうして、海外はミルクなどを発酵させて食べるため、日本は農作物を発酵させて保存するためという形でそれぞれの発酵文化が形成されていきました。
日本での乳利用について調べると、仏教の伝来により、生き物の殺生を戒めることとなり、牛乳を飲む習慣はずっと定着しませんでした。日本人が牛乳を飲むようになったのは明治時代に入ってからで、ヨーグルトが身近な食品として定着したのは私の経験では1955年以降のことです。
つまり、ヨーグルトの動物性乳酸菌は、日本ではまだ100年も歴史がありません。それに対して、日本人が漬け物などの植物性乳酸菌を摂っていたのは2000年以上前からです。日本人は、ヨーグルトよりも漬け物から乳酸菌を摂り続けてきたわけですから、植物性乳酸菌は日本人の体と抜群に相性が良いといえるでしょう。
植物性乳酸菌のほうが腸内で生き残りやすい

また、植物性乳酸菌と動物性乳酸菌には環境による生活力の違いがあります。例えば、動物性乳酸菌はミルクのような五大栄養素※1が豊かに整い、かつ穏やかな環境に長く生活しています。そのため過酷な環境には耐えられません。
それに対して植物性乳酸菌は栄養素のバランスが悪く、かつ植物質ならではの過酷な環境下に耐えて生活してます。
食べものは消化器官を通って腸に行くわけですが、その間に胃酸や十二指腸の強い消化酵素※2の中を通過します。このような過酷な環境をくぐり抜けるのは植物由来の乳酸菌の方が適しており、生きたまま腸にまでたどり着く可能性が高いのです。
そして、乳酸菌には腸内環境を整えるという効用があります。腸まで届いた乳酸菌が悪玉菌を抑え、腸内環境を整えることで便秘解消の手助けとなるのです。
漬け物でもヨーグルトでも1gに生きた乳酸菌が数千万〜数億個入っています。これは普段の食事量で、生きた乳酸菌を十分量摂っていただけると思います。
一方、腸にたどり着いた乳酸菌は腸内には3~4日程度しか生きて残らないので、発酵食品を継続的に摂っていただくことがおすすめです。
植物性乳酸菌は生命力が強く、古来から日本人が摂ってきた乳酸菌です。したがって、長年、日本人の健康に対して重要な役割を担っていたのが植物性乳酸菌だったといえるでしょう。
わがままな日本人の腸には…
乳酸菌もその国の食文化、食生活に合ったものがあるということですね。植物性乳酸菌は日本人に合うと知れて勉強になりました。
皆さんも、私たちの先祖が古くから食べてきた植物性乳酸菌を今まで以上に摂り入れてみてはいかがでしょうか?
※1 炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルのこと(編集部注)
※2 分解する酵素(編集部注)
<2025年 新春号 Vol.67 31-33ページ掲載>





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