2019.04.04

季節の食卓

ふるさとレシピ 第7回『太巻きずし』

「ふるさとの味」を求めて全国の食卓へお邪魔する「ふるさとレシピ」。今回は千葉県・斎藤さんちの太巻きずしをいただきました。

開く楽しみが賑わす“つくる”と“いただく”

太巻き祭りずしとも呼ばれるこの華やかな料理は、冠婚葬祭やお花見など、人の集まりには欠かせないものだった。

特徴は、その大きさと、独特の絵柄。子どもの手のひらほどもある大きな巻きずしは、「巻いて」は作れない。

片手に巻きすを広げ、完成の絵を想像しながらご飯を積みあげるように作っていく。

「昔からの模様もあるけど、新しいものを作ったりもするよ。子どもはチーズなんかを巻くと喜ぶね」そう話すのは千葉県君津市にお住まいの斎藤順子さん。

斎藤さんとご友人たちが集まった地域の会館は早朝から大賑わいだ。

太巻きずしは使うご飯の量も多く、手もかかる。そのため昔から親戚中の人が集まり、家中でワイワイしながら作ったそうだ。


また、太巻きずしをお祝いに贈る習慣もあった。包丁を入れて初めて現れる鮮やかな模様。

まるで贈り物の箱のような「開ける楽しみ」がこの料理にはあったのだろう。実際に作る様子を見せていただいても、この「切る」作業が一番盛り上がる。

「わぁ!キレイ!」「かわいいねぇ!」と、切り口に次々と現われる美しい蝶や花の絵に、歓声が上がる。




色とりどりの模様が楽しげに並ぶ「太巻きずし」。この模様が、老若男女問わず食事を一層盛り上げる。

見ても食べても楽しい太巻きずし

楽しそうな声の中、大皿いっぱいに繊細な模様が並んだ。

「さぁさぁ!そのまま手で召し上がってくださいよ」 豪快にかぶりつき、太巻きずしをいただく。絵柄の輪郭は千葉特産の海苔だ。

どの巻きずしにも使われ、程良く湿り柔らかな香りが甘いご飯と一緒にほぐれる。見ても、食べても楽しい。


これほど豪華絢爛な太巻きずしだが、実際に使われている具は「米、海苔、かんぴょう」とシンプルなものばかり。

話によれば、昔、魚介の手に入りにくい千葉県山間部の限られた素材でいかに客人をもてなすかという心がこの料理を生んだのではないか、という。

確かに、桜でんぶや赤梅酢により染められた鮮やかなすし飯は、それぞれに風味が違う。


四口ほどで平らげると、「今度はこれも!」と次々に勧められた。口を大きく開けて食べるせいか自然と会話も弾む。

食べる人は作り手も、食卓をも大いに賑わす。この一品にはふるさとの工夫と知恵が惜しみなく活かされている。




シンプルな具で、行事のお昼時を華やかに。お子さんの運動会に、お友達とのお花見に、ぜひ作ってみてください。

作ろう♪ 桃の花の太巻きずし

見ても食べても楽しい太巻きずし。行事の楽しみを、太巻きずしで1つ増やしませんか?

海苔は湿気を吸うとどんどん縮んでいきます。ぱっぱと手早く巻けるように材料を小分けにして並べておくのがコツです。


[材料(1本分)]
すし飯                     300g
ピンク色のすし飯(今回は色つき粉末すし酢を使用)125g
海苔                      全形1枚、1/4を5枚
スティックチーズ                2本
野沢菜(または茹でたほうれん草)        5枚
紅梅かんぴょう(赤梅酢で漬けたもの)      5本
桜でんぶ                    大さじ2

[作り方]
① 海苔(1/4)の上に紅梅かんぴょう1枚、桜でんぶ1/5量、すし飯(ピンク)25g、すし飯(白)10gの順でのせ、巻きすの両側をすり合わせるように転がします。これを5本作ります。

② 海苔の合わせ目を中心に向けて3本組み、中心にスティックチーズを入れ、残りの2本も組みます。軽く巻いて落ち着かせたら、花びらの間に野沢菜を一枚ずつはさみ、花部分の完成!

③ 巻きすに全形海苔を縦長に置き、上下2cmを残してすし飯(白)200gをのせます。
この上に②をのせ、巻きすごと持ち上げます。すし飯(白)50gを上にかぶせ、模様が中心にくるように整えます

④ テーブルの上で海苔の左右を合わせ形を整えます。
濡れぶきんで太巻きの両端を整え、包丁で7等分に切ります。力を入れずに、やさしく手早く!

★斎藤さんのポイント
普通、巻きずしは台の上で巻きすをくるっとして巻くけど、上下のあるような模様の巻きずしの場合は「かぶせごはん」をして手の上で形を整えるんだよ。そうすると綺麗な模様がちゃ~んと真ん中にくるからね!


<2011年 春号 Vol.12 7-8ページ掲載>




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