2020.03.10

にっぽん再発見

「水」について考える

蛇口をひねれば、いつでも安心でおいしい水が出ます。しかし、水は無限ではありません。自分たちが使っている水のことをあらためて考えてみたいと思います。

日本の水事情

日本は世界的にも降水量が多く、世界の年間平均降水量の2倍以上あります。

ところが国土面積が狭いわりに人口が多いので、年間降水量を人口で割ると意外に少なく、世界平均の3分の1程度。

海に流れ出てしまうことも考えると実際に利用できる水はもっと少ないのだそうです。世界の中では決して「水に恵まれた国」とはいえないのです。

それでも、日本では上水道があまねく普及していることもあり、蛇口をひねればいつでも水が出るという恵まれた環境のもとで私たちは暮らしています。


日本人が1日に使う水の量は、1人あたり290リットル(国土交通省「日本の水資源の現況」)。1杯10リットルのバケツで考えると29杯分です。

私たちが生命を維持していくために必要な水分は2.5リットルで、バケツ4分の1杯。

その他に使用している水のほとんどが風呂・トイレ・洗濯・食器洗い・洗面など「洗ってキレイにするための水」です。




1日に290リットルもの水を利用しています。普段、何気なくひねっている蛇口からこれだけの量の水が使用されています。

地球上で使える水は0.01%

「水の惑星」といわれる地球も、その97.5%は海水。人間が使える淡水は、地球上の水のわずか2.5%で、実際に使える水は、さらに少なく0.01%しかないのです。

その水が、地球上の人々にうまく行き渡るといいのですが、現実はそうなっていません。

水道もなく、安全な地下水や雨水も利用できない人の数は、6億5千万人にのぼります。


世界保健機関は、衛生的で健康な生活を続けるためには1人あたり1日最低50リットル(=バケツ5杯)の水が必要だとしています。

しかし、世界には、そのバケツ5杯が簡単には得られない人たちがいます。


中近東の砂漠地帯では、1日約25リットルの水で暮らす村があるそうです。トイレは水洗ではないので水を使いません。風呂は川で水浴びをするだけです。

西アフリカの村ではもっと少なくて、1日約5リットル。洗濯はめったにできません。1リットルのやかんの前に、子どもたちが手を洗うため行列するそうです。

また、エチオピアのある村では、水を手に入れるため、毎日5キロ離れた水源まで16リットル入る瓶を持ってくみに行くそうです。




もし地球の水の総量をお風呂1杯分だと仮定すると、ヒトが使える水は、大さじ1杯とちょっと(20cc)にしかならないそうです。

私たちの「豊かな水の暮らし」は続く

このように、地球規模では、ヒトが使える水の量は限られていて、日本人には想像もつかないほど、わずかな水で暮らす人たちがいます。

一方で、日本はやはり恵まれた水環境にあり、毎日290リットルもの水のほとんどを、「洗ってキレイにするため」に使用できているのです。

これからも、「もしも」のことがない限り、蛇口からは24時間、安全な水が出るでしょう。しかし、それが未来永劫続くとは思えません。


企業も努力をし、トイレやお風呂、洗濯機などは節水型が主流になり始めています。

私たちも、生活をガラリと変えるのは難しいかもしれないけれど、たとえばシャワーをこまめに止める、歯磨きのとき流しっぱなしにしない、少しだけ蛇口をしぼる、といったことならできるかもしれません。

豊かな水の暮らしに感謝しつつ、水の使い方や水の実情について意識することから始めてみませんか。


<2016年 夏号 Vol.33 25~29ページ掲載>




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