2019.03.27
にっぽん再発見
私たちの中の「江戸しぐさ」~その1~

相手側の傘を上げ、ぶつからないよう、相手を濡らさないよう。
傘かしげ
私たちの日常の、何気ないからだの動きや言葉、実はそのルーツの多くが、「江戸しぐさ」にあるというのをご存知ですか?
江戸の町人たちが、互いに気持ちよく暮らすために知恵を出し築き上げた「江戸しぐさ」をご紹介していきます。
知れば知るほど面白く、「日本人」が垣間見えてきます。
○傘かしげ
雪や雨の日、狭い道をすれ違う時、こちらの傘から落ちるしずくが相手にかからないように、人のいない外側に傘を傾け、お互いに相手を濡らさないようにすれ違うしぐさ。
「江戸しぐさ」の中でももっとも知られた往来しぐさです。

相手側の肩と腕を引き、さりげなく挨拶をしつつ。
肩引き
こちらも、狭い道を歩く時の知恵であり、すれ違う相手に対する尊重を表す挨拶のようなもの。
すれ違う相手が見えたら、相手側の肩と腕を引いて、お互いにぶつからないようにするしぐさです。

謝られたら「うっかりしてました」と、お互い様の気持ちを表す。
うかつあやまり
うかつとは、「うっかり、ぼんやり、不用意に」という意味。
江戸の人たちは、縁日などの雑踏で足を踏まれることも多かったのでしょう。足を踏まれ、踏んだ人に謝られたら、「こちらこそうっかりしました」と謝りました。
些細なことが大事(おおごと)になるのを、互いに謝ることでまるく収める大人の対応です。
~江戸しぐさとは?~
人口百万人の大都市だった江戸の町方のリーダーたちが、互いに思いやり助け合いながら暮らしていくために、知恵を絞り築き上げたのが「江戸しぐさ」です。
それは作法とかパフォーマンスではなく、相手への思いやりをベースにした心構えや考え方。あたり前のものばかりですが、伝え残していきたいものです。
<2012年 夏号 Vol.17 7ページ掲載>