2019.01.11

にっぽん再発見

楽しい落語 ~大人の再入門~

“平成落語ブーム”が到来している今、若手落語家・春風亭昇々(しゅんぷうていしょうしょう)さんに落語の魅力をたっぷりと伺いました。

落語家インタビュー 春風亭昇々さん

マイケア(以下M):ズバリ、落語って面白いんですか?

春風亭昇々さん(以下昇々さん):
たとえば古典落語は、現代の私たちが聴いても面白い噺ばかり。
いつの時代も変わらない〝人間の心〟が描かれているので、中にはほろりとくる噺(はなし)も。
古典落語は昔から多くの落語家に演じられてきましたが、時代とともに磨かれ、洗練されてきたから、「落ち(オチ)」がわかっていても面白い。

今はインターネットなどでも気軽に落語に触れることができますが、なんといっても生で聴く落語がおすすめです。

話し手と聴き手が一緒になって作る雰囲気や、会場が一体となる感覚をぜひ味わってほしいですね。

M:落語を演じる難しさ・面白さってなんですか?

昇々さん:落語は話し手一人、座布団一枚あればどこでだってできてしまう話芸です。
それでいて老若男女、古今東西どんな世界観でも無限に表現できる。

正解も100点もないので、演じる側としては試行錯誤の連続です。奥深く難しいですが、その分やりがいもあって面白いですね。




寄席は、笑いを共有する空間。ふっと江戸時代にタイムスリップしたかのような錯覚が心地いい、非日常的な時間が流れています。

落語とは気楽に聴けてお得な娯楽

M:落語を楽しむのに、何か準備などは必要ですか?

昇々さん:何もありません。予備知識なども特に必要ないので、気楽に聴いてください。落語は誰が聴いても楽しめる芸能です。

聴き手にも情景を思い浮かべる想像力が多少必要になってきますが、そこは小説を読んだりするのと一緒で、難しく考えなくても大丈夫。

まずは頭を空っぽにして落語家の言葉に耳を傾けてみてください。

そして気になる落語家がいれば、書籍やインターネットなどで調べてみてはいかがでしょうか。

M:初心者が生で落語を聴くとき気をつけることはありますか?

昇々さん:「伝統芸能」と聞いて敷居が高く感じてしまいがちですが、もともとは大衆のもの。だから身構える必要なんてありません。

たとえば、東京の浅草演芸ホールなどで行われる寄席は365日昼も夜もやっていて、飲食も自由。3,000円弱で一日楽しむことができる、とてもお得な娯楽です。

あ、生で落語を聴くときに気をつけてほしいことが一つだけ――たとえ知っていても落ちを先に言うのだけはやめてくださいね(笑)。

※寄席…落語などの演芸を公演する劇場の総称
※落ち…サゲともいう。「落語」とは落ちのある話のこと




落語の道具(扇子・手拭い)を使った仕草も、聴き手の想像力を刺激します。その一部をご紹介します。

すべての経験が芸の肥やし

M:最後にあらためて、落語を演じる側の楽しみはなんですか?

昇々さん:できる噺がどんどん増えていくことが楽しいですね。

逆を言えばまだできない噺がある。たとえば長屋の大家や代官の役を三十歳そこそこの僕がやってもまだまだ貫禄が足りない。所帯を持つことで夫や父親の演技にも心が入ります。

落語家って、歳を取ることのマイナス面がほとんどないんですよ。そこはスポーツ選手なんかとは逆。

子供の役も女性の役も、歳を取った方がしっくりくる。全ての経験が芸の肥やし。だから、これからが楽しみで仕方ないですね。


聴く方も演じる方も、みなさん落語が大好きで心から楽しんでいるご様子。落語家さんを見習って、今後は「落ち」のある面白い記事を皆様にお届けできるよう励みます。もちろん、締切は落とさないように。……おあとがよろしいようで。


[春風亭昇々さん プロフィール]
春風亭昇々(しゅんぷうていしょうしょう)
昭和59.11.26生まれ
春風亭昇太に弟子入りし、前座時代を経て現在の階級は二ツ目。
実力派ながら型破りな創作落語を次々と発表し、TVやラジオなど、メディアにもひっぱりだこの若手注目株。


<2018年 夏号 Vol.41 35-42ページ掲載>




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