2018.12.28

にっぽん再発見

書をたのしむ ~大人の再入門~

書道家・髙橋古都(たかはしこと)先生に、大人だからこそ感じられる書の世界の味わいを伺うとともに、再入門する方へのアドバイスをいただきました。

あらためて味わう筆で書く魅力

大人になるまで筆を持ち続ける方は少なく、それでも「いつかもう一度、筆を手にしてみたい」という思いをどこかに抱き続けている人は多いのではないかと思います。

今回、書道家として活躍されている髙橋古都先生に、大人になって再入門する書道の魅力ついて伺いました。


「子どもの頃に体験した書道とは、だいぶ違いますよ。大人は、いいことも悪いことも経験してきて人生経験が豊富。書の線質には、そうした人生の経験が全て出ます」と古都先生はおっしゃいます。

子どもの頃の書道は、形や書き順を覚えて正確に書くことが大切でした。

でも、すでに文字自体も、その読み方や意味も知っている大人は、書く文字に自分自身を表現して楽しむことができる——そこが大切なのです。


人生経験のある大人が書けば、意図せず垂らした墨もまた味わいであり、作品の一部となると古都先生は続けます。

あまり構えないで、「懐かしい墨の香りを楽しみながら筆で文字を書いてみよう」くらいの気軽さで始めてみてもいいのかもしれません。

さらに、古都先生に、道具選びから最低限知っておきたい筆運びについて、ご指導いただきました。




体幹をしっかり保つことを意識して座ります。体は力を抜いてリラックス。紙面と目の距離を離すことで、腰も体も疲れず、肩も凝りません。

道具を揃え、筆をとる、思い立ったが吉日

初心者なら筆は千円台のもので十分です。最初は墨汁から始め、ある程度慣れてから墨を使いましょう。筆は、最初は糊で固められているので指で揉みほぐします。

最初は書きにくくても、水に浸さずそのまま墨を使って書いてください。


筆は終わった後の手入れが大切です。よく水で洗って、一度外で陰干しをしてしっかり乾いたら室内で下げて保管してください。


書く際は「体幹」、つまり体の中心をしっかり意識しつつ、紙の幅で右に左に、前に後ろに少しだけ体を動かすことで書を書きます。

筆の持ち方は筆に人差し指を1本かける単鉤法と、人差し指と中指の2本をかける双鉤法があります。おすすめは、大きな運動で柔らかい線が書ける単鉤法です。


実際に書くときは、墨をたっぷりつけないといい字は書けないと思ってください。

墨が落ちるがごとくたっぷりつけて、高いところから紙面に打ち込んでいきます。

打ち込んだとき、筆のバネを感じ取ってください。毛筆ならではの感覚を楽しんで、筆のバネを使って体も傾けつつ、筆を動かしましょう。




横画は、❶筆先を起点に斜め右下45度の角度で打ち込み止める ❷ゆっくり右に移行 ❸少し筆を上げ、再び右下に打ち、左に寄せて三角を書くイメージで筆を上げる

筆の運び方と基本の点画を知る

点画には、点、横画、縦画、払い(右払い、左払い、短い左払い)、払い上げ、はねなどがあります。

今回はその中でも最初に覚えて欲しい、横画、縦画、右払い、左払い、はねについて説明します。

コツは、筆の運びを丁寧に行うこと。点画を正しく書きましょう。

縦画
まっすぐ引くこと自体が難しいが、起筆した部分の少し上に視線を置くことで体の中心が定まり、まっすぐ縦画が引ける。

左払い・右払い
体幹を意識し、左右ともに払う方向へ傾けるほどに体を大きく使って書く。左払いは、①筆先を斜め45度で打ち込み、そこからゆっくりと左斜め下に引いていく。最後は筆を徐々に上げていき筆先だけが残る。②右払いは、斜め45度で打ち込み、③右に払うところでいったん止め、タメを作る。④最後は筆先をまとめながらゆっくり右へ払う。

はね
まっすぐ縦画を引き、いったん止めて筆先を左へ寄せ、直角に左に押し出すようにゆっくりはねる。


終わりに……
年賀状や自分の名前を上手く書きたい……、目的はなんであれ、書は、人生の様々なシーンをより豊かなものにしてくれそうです。

基本の道具さえあれば今日から始められます。まずは気軽に筆を持ち、自由な表現を楽しんでみませんか?


~髙橋古都先生~
日本書道専門学校で講師を務めるかたわら、自らの作品制作を精力的に行なっている書道家。小柄な体からは想像もつかないほどパワフルで大胆な書を書くのも魅力。書の道を広く学び、漢字実習や書式の研究も行う。日本書道専門学校優秀賞、毎日書道展などで多数の受賞歴あり。


<2018年 新春号 Vol.39 7-14ページ掲載>




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