2018.08.08

食と栄養

「切る」とおいしさの関係 ~野菜の切り方にはワケがある~

今回紹介するのは、切るテクニックではなく、野菜の切り方。切り方一つで、味も栄養も違ってくるとしたら……?

切り方にはワケがある

料理はまず材料を切ることから始まります。この「切る」だけでも、献立にあわせて、薄切り、せん切り、角切り、輪切り、小口切り、みじん切り……と実に様々。

火の通りや味のしみこみをよくするための隠し包丁や、煮くずれを防ぐための面取りといった、おいしく、美しく仕上げるための切り方の知恵や工夫もおなじみですね。


しかし、調べてみると、これまで当たり前のようにやってきたことなのに、「えっ!そうだったんだ」という新たな発見がありました。


例えば、料理の定番野菜の一つ、タマネギの切り方。タマネギは縦に切ったほうがいいのか、それとも輪切りのように横に切るの……?

実は、タマネギは縦に切った場合と横に切った場合では、味や食感が違います。

ポイントとなるのが、野菜の繊維の方向に沿って切るかどうか、なのです。



切るときに「繊維を意識するか、しないか」ひとつで、食感や味が変わってきます。

繊維の方向を意識して

野菜には多くの場合、縦の方向に(根から葉への上下に)繊維が走っています。

この繊維に沿って縦に切るのと、繊維を断ち切るように横に切るのとでは、食感や味が違ってきます。


タマネギでいえば、縦に切ると、繊維が残ってシャキシャキとした食感となります。辛さも含めて、タマネギの風味を残したいのなら、この切り方ですね。

一方、横に切ると、繊維が断ち切れて、やわらかな口当たりになります。
細胞を壊すことで、成分が出やすくなるので、スープなどタマネギの甘みをいかしたり、煮汁ごといただく料理にあうということです。

気になるタマネギの辛みはどうすればいいでしょう……。横に切って辛みの成分を抜けやすくしたあと、軽く水にさらすと辛みはなくなります。

ただし、一緒に栄養も流れ出してしまうので、水にさらす場合は短めに、がポイントです。



実は野菜の栄養量も、切り方で左右されます。例えば、子供が嫌いなピーマンのあの苦味も……?

栄養と「切る」の関係

実は「切る」とは栄養量を左右するほど偉大なもの。

例えば、サラサラ効果で知られるタマネギ。その元となるのは辛味成分です。タマネギの細胞を壊すように切ると、辛みのもととなる成分が外に出てきます。

水にさらさず、そのままラップなどして15分くらい放置すれば、辛み成分がタマネギの酵素と反応して、時間とともにサラサラ物質が増えていくのだそうです。


子供の嫌いな代表格ピーマンの苦味も、切り方で抑えることができます。苦味の原因は切るときに細胞を壊してしまうこと。繊維に沿って縦切りすると苦味は出にくくなります。

内側の白いワタも苦さの原因のひとつ。包丁でこそぎ取るようにきれいに取り除いておくのがポイントです。


ショウガやニンニクなどの香味野菜のいい香りも、繊維を断ち切ることで強くできます。逆に言えば、繊維に沿って切ることで香りを抑えられるということ。

切り方を心得ておけば、用途に応じて香りに強弱がつけられます。


最大のポイントは「繊維を意識すること」。

さっそく今日から「切る」に、ちょっとだけ工夫を加えてみませんか。


<2013年 新春号 Vol. 19 31-34ページ掲載>

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