2018.05.30

食と栄養

知るほどに味わい深まる「薬味」

普段なにげなく使っている「薬味」、この夏はちょっと見直してみませんか。

「薬味」の組み合わせには意外な歴史が

そば、鍋もの、冷や奴……これらの料理に欠かせないのが、ネギやショウガなどの「薬味」。

調べてみると、一つひとつの「薬味」に役割があること、意外な歴史があることもわかってきました。

例えば、「ウナギと山椒」。たれをつけて焼く、いわゆる蒲焼が普及したのは江戸時代のことで、それ以前は、山椒味噌を塗って焼くのが一般的な食べ方でした。

山椒が用いられたのは、川魚特有の匂いを消すため。その名残りが、現在も残っているというわけです。


「ワサビとそば」も似た意味を持ちます。

鰹節を使った醤油仕立てのつゆが主流になったのは江戸時代からで、出始めの時には「魚臭い」と言う人も多数いたそう。

ワサビを添える食べ方は、うまみを引き出し、生臭さを消すのに有効だったのです。


「刺身とつま」の組み合わせは、薬味の役割が前述とは違ってきます。

つまの始まりも実は江戸時代。色々な魚を大皿に取り合わせる「刺身の盛り合わせ」が人気になり、味が混ざるのを防ぐとともに、脂ののった刺身を食べた後で口の中をさっぱりさせられるよう、つまを盛り込むようになりました。

現代の料理に盛り付けられる薬味は、過去の意味が踏襲され続けたものなのかもしれません。



組み合わせは先人たちの知恵……いいえ、それだけではありません。「薬味」は栄養学的にもその力が証明されています。

少量でも栄養満点! 「薬味」の力

歴史ある薬味の組み合わせに対して、定番中の定番「焼き魚と大根おろし」の歴史はよくわかっていません。

しかし、その健康効果はバツグン。サンマやサバにはミネラルが豊富ですが、大根のビタミンCがこれらの吸収を高めてくれます。

また、同じく大根に含まれるジアスターゼが、脂肪を分解し消化を促す働きもあります。

他の薬味をとっても、それぞれ効果は違えど、どれも栄養たっぷり。ほんの一部分ですが、その効果を紹介しますのでぜひ、料理にお役立てください。


○ネギ
料理にさわやかな辛味や食感、彩りを添える。身体を温め、疲労回復を促す効果もある。
さらにビタミンB1の吸収を高めるため、肉うどんに薬味として添えると効果的。

○ミョウガ
独特の香りは加熱に弱く、できれば生食で。料理の油っこさをやわらげ、風味を高める。
刻んだミョウガを梅干しと混ぜて一晩おくと、ひと味違った薬味のできあがり。

○かぼす・すだち
吸い物などの風味づけに。独特の酸味と香りが食材の味を引き締め、旨みを増す。
じゃこやしらすに絞り汁を混ぜると、クエン酸の作用でカルシウムの吸収がよくなる。



いつものそうめんを夏野菜と薬味でひと工夫。薬味の香りを存分に味わえます。

夏にぴったり!薬味の逸品レシピ

最後に、薬味の香りを夏らしく涼しげに堪能できるレシピをご紹介します。

しかも、いつものそうめんに、グリルした野菜、そして薬味を加えるだけと、とてもカンタン!

ひんやりとした冷製のつゆを口に含めば、清涼感と、だしのうまみと薬味の香りが広がります。ぜひお試しください。


<グリル野菜のあっさりすだち素麺>

材料(2人前)
素麺     3束
かぼちゃ   1/8個
なす     1本
長ねぎ    1/2本
すだち    2個
ししとう   4本
みょうが   1本
京の御だし  400cc(2パック)
薄口しょうゆ 100cc
みりん    100cc
酒      50cc

~作り方~
❶酒とみりんは、鍋に入れて火にかけてアルコールをとばす。そこへだし、薄口しょうゆを加えてひと煮立ちさせ、火を止め冷ましておく。

❷なすはヘタを取って縦半分にし、食べやすい大きさに切る。かぼちゃは5㎜程の薄切り、長ねぎは2㎝幅に斜めに薄切りにする。

❸フライパンに油(分量外)を熱し、中火でかぼちゃを焼き、両面に焼き目が付いたらなす、長ねぎ、ししとうを加えてこんがり焼き、塩(分量外)を少々振る。

❹素麺は既定の時間通りに茹で、冷水でよく洗い冷やす。

❺器に④と多めの氷を入れ、①を注ぎ、③と、薄切りにしたみょうがとすだち、お好みの薬味を盛り付ける。


<2014年 秋・冬号 Vol. 26 25-28ページ掲載>
<ごちそう 2017年 6月号 3ページ掲載[レシピ]>

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