2018.05.16

食と栄養

日本人の健康と食卓をささえる醗酵食

醤油や味噌などの代表的な調味料が醗酵食品の日本。日本の食卓は醗酵食品がささえています。

日本食は醗酵食品の宝庫

きょう、ご飯は何を食べましたか?

朝食が焼き魚、納豆、ぬか漬け、味噌汁なら、これだけで4種類の醗酵食品を食べたことになります(焼き魚にかけた醤油、納豆、ぬか漬け、味噌)。

ほかにも、煮物ならば調味料に醤油、みりん。酢の和え物ならば、米酢。冷ややっこに乗せたかつお節。晩酌の日本酒、焼酎などなど……。
和食は醗酵食品の宝庫です。

そもそも「醗酵」とは、カビなどの微生物の力によって、材料や原料の性質が変化し、人間に役立つ物質ができること。

たとえば、私たち日本人の万能調味料である醤油を例にとれば、主原料の大豆、小麦、塩に、麹菌、酵母、乳酸菌という微生物が働きかけて、おいしい醤油ができあがります。

また、納豆の場合は、納豆菌という細菌の活躍で、大豆があのネバネバ納豆になるのです。



たとえば、鮭の味噌漬け、イカの塩辛、日本酒。発酵食品だけでも食卓は成り立ちます。

醗酵は何をするの?

日本食はいま、〝健康食〟として世界中から注目されています。

その理由のひとつが、醗酵食品を用いた日本の伝統食は、ヘルシーでからだにいいことがいっぱいだから。

では、醗酵はどんないいことをしてくれるのでしょう。

食品における醗酵には、4つの重要な働きがあることがわかっています。
(1)栄養素が分解され、体内に吸収されやすくなる
(2)栄養素の分解の過程で、さらに効能を高める
(3)食品が持っていない新たな栄養素を作り出す
(4)食品がもつ毒性を消す

かんたんに言うと、醗酵によって食材が本来持っている栄養が十分に引き出されるだけではなく、本来持っていなかった新たな栄養素が作り出されます。

さらには味も風味も良くなり、保存性も非常に高くなる、といういいことづくめの微生物の活躍が、醗酵なのです。



甘酒も立派な醗酵食品。江戸時代には、夏の熱中症予防に飲まれていたくらい栄養が豊富!

醗酵は、健康も長寿もささえる

日本に住む微生物は、今も昔も変わらず醗酵食品をつくり、私たちの食卓をうるおし、健康長寿に貢献してくれています。

醗酵が私たちにもたらすものを語り出すと、食に関するものだけでも軽く本1冊にはなってしまうでしょう。 そこでここでは、いくつかの食品の嬉しい働きをご紹介します。

<醗酵食品の嬉しい働き>
◉醗酵で増える乳酸菌
醗酵食品は、醗酵の過程で乳酸菌が増殖します。
とくに味噌や納豆にふくまれる植物性乳酸菌は、動物性のそれよりも整腸作用が強く、アレルギー症状を改善してくれます。

◉味噌
味噌の効能の代表は、コレステロールと中性脂肪を減らすふたつの効果が。
サポニンが悪玉コレステロールを減らし、ペプチド※が中性脂肪を減らすそうです。

◉かつお節
かつお節に含まれるペプチド※は、疲労回復や集中力を高める効果が認められています。
余分な塩分を排出させ、高血圧予防の働きもあるとか。

◉納豆
整腸作用、肥満防止、インスリンの分泌抑制、骨粗しょう症予防、血栓予防など、その効用は多様。「健康長寿食の王様」と言われています。

◉甘酒
蒸した米を麹菌で発酵させてできる甘酒。成分の20%がブドウ糖。
さらに、人間が必要なすべてのビタミン類を含んでいるそうです。
かつては、滋養強壮剤として愛飲されていたとか。

※タンパク質が分解されアミノ酸の結合体となった物質


<2012年 夏号 Vol.17 13-16ページ掲載>

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