2018.02.20

食と栄養

油と脂の新常識 ~油のこと、知っていますか?~

実は“いい油”は積極的に摂ったほうがいいんです。

油脂の役割 ~体にいい、こんなこと~

 長い間、悪者扱いされがちだった油脂。しかし油脂を摂ることで得られる脂質は、炭水化物やたんぱく質とともに、人の体が必要とする大事な栄養素の一つ。
たくさんの素晴らしい働きをし、不足するとさまざまな不調を招きます。

・体を働かせる大切なエネルギー源
 脂質は、糖質よりも大きなエネルギーを生み出します。しかも体脂肪として体に蓄えられるので、常に利用することのできる効率のいいエネルギー源なのです。

・細胞膜やホルモン、血管の材料になる
 人の体は細胞の集合体。脂質を材料として作られる細胞膜は、その細胞を形作っているだけでなく、栄養素のやりとりや情報の伝達にもかかわり、脳への指令もコントロールします。
 また、脂質はホルモンや血管の材料でもあり、代謝をよくするなど、体を正しく働かせるために欠かせません。

・ビタミンの吸収を助ける
 脂質はビタミンA、D、Eなど脂溶性ビタミンの吸収を高めます。生野菜を食べるときは脂質も一緒にとる方がいいのです。

「積極的に摂りたいもの/避けたいもの」を知るだけでも食生活が変えられます。

油脂の種類と特色を知りましょう

 油脂といっても、種類により性質は様々。油の種類や特色をきちんと知り、「積極的に摂りたいもの」を見極めることが大切です。

 食品に含まれる「脂肪酸」中でも特に必要なのが、「必須脂肪酸」と呼ばれるオメガ3とオメガ6。これらは体内で合成できず、食物から摂取する必要があります。

 オメガ6は、コーン油などサラダ油、肉や卵などにも含まれており、普通の食事で必要量は摂れています。
 加えて、スナック菓子などの加工食品にもオメガ6は使われており、現代の生活ではむしろ、摂り過ぎによる「動脈硬化」や「心筋梗塞」などの健康問題が危惧されています。

 一方、オメガ3は、血液を流れやすくしたり、炎症をおさえるなどの作用をもっています。特にオメガ3の中のEPAやDHAという脂肪酸は、血管を若々しくし、脳機能を向上させる力がある有効成分。これを多く含むのがイワシ、アジなどの青魚です。
 ところが、現代の日本人はオメガ3が充分に摂れていません。それぞれのよい機能を充分に発揮させるには、両方をバランスよく摂ることが大事です。その摂り方の割合はオメガ3〝1〟に対してオメガ6〝2〜4(最大)〟が適切といわれています。

油脂の摂り方はバランスが大切です。

油の摂り方には“理想バランス”がある

 私たちが健康を維持するうえで理想的な油脂のとり方は、固体の脂(動物性油脂)/多価不飽和脂肪酸(オメガ3とオメガ6)/一価不飽和脂肪酸(オメガ9)の割合が「3:3:4」だと、最新の研究でいわれています。
 ただし、オメガ9系の脂肪酸は、オリーブオイルやアーモンドなどのナッツ類に含まれますが、人の体内で作ることのできる脂肪酸なので、不足する心配はありません。

 意識して摂りたいのはアマニ油やエゴマ油、イワシ、アジなどの青魚に含まれる「オメガ3」。積極的に食べたい食品ですが、外食が多い方は、魚油系のサプリメントで補うことも必要かもしれません。
 厳密にこの割合を守るとなると大変。ですから、積極的に控える、または摂取するべき油は何か、を意識するだけでも十分です。それだけでも、体調に変化が見られますよ。

  *  *  * 

 油は控えるものではなく、いいものを選んで積極的に摂る──が今の栄養学の常識であることがわかりました。理想のバランスを頭におきながら、おいしく、楽しく、そして賢く、油とつきあっていきましょう。

※油脂に関する研究は、過去50年で紆余曲折。まだまだ結論は出ていないようで、推奨や適正といわれることも、変わる可能性はあります。


<2016年 春号 Vol.32 33-37ページ掲載>

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