2019.08.27

マイケア日記

あれ食べたいこれ食べたい 第2回「記憶の中にある、美味しいサンマ」

今回の担当:須田 妙(だんらん編集部)パクチーを食べに、タイへ一人旅をした28歳。
●好きな食べ物:魚全般ともんじゃ ●嫌いな食べ物:ありません!

今回の食材・岩手県釜石市「新サンマ」

だんらん編集部スタッフが産地を訪れ、日本全国の魅力ある旬の食材を紹介する連載企画。

今回は、サンマ大好物の私が、家族旅行で訪れたことのある三陸沖・岩手県釜石市に、美味しい新サンマを食べに行きました!

子どもの頃は“食べる”という行為が苦手で、食に興味を持てませんでした。

そんな私に食べる楽しさを教えてくれたのは家族。子どもの頃、秋になると毎夕祖母は庭で七輪を使ってサンマを焼いていました。

私はサンマが焼き上がったら、父の元へ届けることが習慣でした。

父は「うまいうまい!」とサンマを頬張っていました。見事に頭と骨だけになっていくサンマを見て、私はそんなに美味しいのかなと、自然と食べることに関心を持つようになっていったのです。

父の大好物は、夏の終わりに出回る新サンマ。それも程よく油ののった三陸沖のサンマが好きだと言います。一年で初めて食べる新サンマは特別なものだそうです。

父が美味しそうに食べていた、三陸沖の新サンマがどうしても食べたい!ということで、岩手県釜石市で水産加工業を営む平庄株式会社を訪れました。




新鮮獲れたての初物サンマは大きくて、皮の張りもビシッ!両手に持ったら、思わず笑みが……。

「美味しい食べ方は塩焼き。七輪なら最高!」

今年は例年に比べ、新サンマが出回るのが遅いそう。本当に新サンマが食べられるのかと不安だった私に、サンマに詳しい平庄の青山豊喜(あおやまとよき)さん[1枚目写真左]が嬉しいひと言。

「獲れたてのサンマ、届いてるよ! ウチのサンマは油がのってて大っきいんだ!」箱を空けたら、見たことないくらいの大きなサンマ。皮がビシッと張っていて、よく太っています。

「新鮮なサンマだから、尻尾を持つとピーンと立つんだよ!」と青山さん。確かに手で持ったサンマは真っ直ぐ、ピンッと真上を向いています。

その様子から、刀の形に似ているので〝秋刀魚〟と言われている理由がよくわかる!


「サンマの美味しい食べ方は塩焼き。それも七輪なら最高だよ!」と青山さんが七輪を貸してくれました。

さっそく七輪に火を起こそうとしますが、なかなか上手くいきません。網にサンマをのせてみても、火加減が難しくて悪戦苦闘。

ただ焼くだけでも大変なんだなとため息をついていると、美味しそうに焼けるサンマの匂いが……。




七輪から漂う匂いに「そうそう、この香り!」と感動。口に含めば、絶妙な旨みが広がり、あっという間に頭と骨だけに。

サンマで思い出すのは家族との風景

油をたっぷり蓄えたサンマは、網の上で〝ジュ~! ジュワ~!〟と音を立てています。脂肪分が多いため瞬く間に炎に包まれ、用心しないとすぐに焦げてしまいます。

もう居ても立ってもいられない! 行儀が悪いのは承知の上で、熱々のサンマを手にとり勢いよくかぶりつきました。

「おいし~い!!」と、私は何度も連呼してしまいました。

やっぱり旬の初物は別格!身は肉厚で、とても柔らかく、崩れ落ちてしまうから注意して食べます。

「美味いだろう? これはこの時期だけに獲れる極上のサンマだよ。しかも炭火焼なんて、他に敵うものはないよ!」と青山さん。

空の下で、海を眺めながら青山さんと食べるサンマは、格別の味でした。


東京への帰路で思い出したのは、子どもの頃の家族との風景。毎日食卓を一緒に囲むのが当たり前でしたが、大人になったらそれがとても貴重な時間だったことを改めて感じたのです。

今年の秋は、離れて暮らす家族を訪ねて、みんなでサンマを食べよう。それも父の大好きな三陸沖のサンマを用意して。

あの時の祖母の笑顔を思い出しながら食べるサンマは、きっととても美味しいんだろうな。


<2013年 秋・冬号 Vol.22 53-54ページ掲載>




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