2018.03.14

にっぽん再発見

大切にしたい「ご先祖の里帰り」お盆について考える

日本人が持つ「祖先を供養する心」が大切に受け継がれてきたからこそ、今のお盆があります。

お盆は日本人にとって欠かせない大きな行事

お盆は離れて暮らす家族が集まり、亡くなった家族の魂を迎える大切な行事です。家族とのつながりについて考える、唯一の行事“お盆”のルーツはどこにあるのか、基本からおさらいしてみましょう。

お盆は正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といい、仏教の説話に由来しています。お釈迦様が弟子の一人に、あの世で苦しむ亡き人を供養して救うため「7月15日に僧や人々に食べ物を捧げて供養すれば救われる」と説き、それがインドから中国を経て日本に伝わりました。
この説話が祖先を敬う祖霊信仰と混じり、現在のような「盆入りにはご先祖様には迎え火をたき、盆明けには送り火をたく」というようなお盆行事が定着していったといいます。

地域によっては、お供え物を小舟に乗せて川や海に流す精霊流しや灯籠流しの風習なども行われます。

行事は時期によっても違います。一般に、新暦の8月に行うお盆を「旧盆」と呼び、暦にこだわって旧暦の7月15日を中心に行う地域もありますが、年によって日が異なるためか、少なくなっています。
東京は「7月盆」、地方では「8月盆」が多いようですが、「7月盆」も「8月盆」も15日が中心となり、13日の盆の入りの迎え火で始まり、16日か17日の盆明けの送り火で終わるのが一般的です。



ご先祖の霊を乗せるナスの牛と、キュウリの馬。左が「水の子」です。

お盆の様々なしきたり

お盆にはご先祖の霊を迎え、送るための様々な習慣があります。その一つひとつの意味から、日本人の先祖を大切にする心を見てみましょう。

ご先祖の霊を迎えるために作る棚を、「精霊棚」とか、「盆棚」といいます。仏壇から位牌を移しお供えをする方法をはじめ、作り方はさまざまですが、どんな形であれご先祖の霊をお迎えする気持ちが大事。集合住宅など、仏壇がない場合は、小机の上を精霊棚としてお供えをし、ご先祖をお迎えすればよいそうです。

代表的なお盆のお供え物「盆供」は、ナスとキュウリに割りばしやオガラ(皮をはいだ麻の茎を干したもの)で足をつけ、ナスを牛に、キュウリを馬に見立てた「精霊馬」です。
ご先祖の霊がナスの牛に荷物を乗せ、キュウリの馬に乗って帰ってくるという説と、帰ってくるときは速い馬で、戻るときはゆっくりと牛に乗って行くという説があるとか。盆の入りにお迎えするときは内側に向け、盆明けに送るときは外側に向けます。

また、ナスやキュウリをサイノメに切ったものと、地域によっては洗い米を混ぜて、蓮の葉に盛り付けた「水の子」というお供え物をする風習もあります。
その他、季節の野菜や果物、お花なども飾って、ご先祖の霊をお迎えします。



墓参りのときの火を盆提灯に移し迎え火をたいていましたが、近年では仏壇のろうそくから移すように。

迎え火でご先祖を迎え入れ、送り火で帰り道を照らす

盆の入りの13日の夕方家の庭先などで迎え火をたいて、わが家の目印に。または、軒下の盆提灯を迎え火とします。ご先祖様は、迎え火の煙に乗って帰ってくるとか。
盆明けの夕方には、ご先祖の霊が戻って行く道を照らすように送り火をたきます。ご先祖をしっかりお見送りするという意味で、迎え火よりも長くたくとされています。
京都の大文字焼きも送り火のひとつ。「五山の送り火」といわれ、毎年8月16日の夜に京都を囲む五つの山に「大」の字などを浮かび上がらせます。

また、盆の入りの13日に家族揃ってお墓参りをして、ご先祖の霊を連れてくるという風習があります。もし13日にできなくてもお墓参りをして、家族が元気で過ごしていることを報告すれば、ご先祖も喜んでくださるでしょう。
お盆のお墓参りが難しい場合は、ご先祖のことを思い、手を合わせるだけでも感謝の気持ちは伝わると思います。

1年に1度、家族が集いご先祖を手厚くもてなすお盆。今回ご紹介した行事から、日本人がいかに生活に先祖を思う心が根付いているかがわかります。お盆は、見える者たちだけでなく、連綿と続く「家族のことを考える4日間」なのかもしれません。

次回は、各地方の先祖のもてなし方を紹介します。


<2017年 夏号 Vol.37 25-28ページ掲載>

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